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ICTによる「未来の現場」導⼊事例

Interview

2016年、国内初のICT建機を導入。変化の時代において最先端技術を駆使し、建設業界を牽引する企業に。

宮崎市福島町にある特定建設業「株式会社 田村産業」。2021年に創業80年を迎える同社は、”地球、自然を考える企業”を理念に土木工事から下水道工事、解体工事、産業廃棄物処理業務など幅広い事業を展開中です。時代背景や経済状況、技術の進歩に大きく左右される建設業界は、需要に応じて常に変革が求められてきました。人材不足が深刻化する中においての、業務の効率化や働き方改革、生産性の向上といった課題への取り組みも他業種同様に必要不可欠です。このような現状の対応策となるのが、国が推進する「建設業界のICT化」。今回は、代表取締役社長の田村努様、専務取締役の田村卓也様に、全国に先駆けてコマツのICT建機を導入したきっかけや導入後のメリットを伺いました。

株式会社 田村産業

事業概要:土木工事、下水道工事、住宅基礎工事、産業廃棄物処理業務、リサイクル業務、建物解体工事など

従業員数:34名(2020年11月16日現在)

どうせやるなら、先頭を走りたい!
ICT建機の導入で、現場施工の安全性確保、効率化、生産性向上を追求。

ー2016年、国内初となるコマツのICT建機「PC200i-10」を導入したきっかけは何だったんでしょうか?

(田村努 社長)

ご存知の通り昭和20年の終戦以降、日本経済は飛躍的に成長を遂げ経済大国への道をひた走っていました。経済の高度成長は、当然ながら我々建設業界にも繁栄をもたらし、大きく盛り上がりを見せていました。しかしバブル崩壊後、日本経済の停滞により建設業界の経営環境は激変。多くの建設業者は淘汰され、生き残る手段を常に考えて行動に移さなければ、時代の波を乗り越えることができませんでした。近年、建設業界にICT化が求められる背景には、人材不足や生産性の低さの解消といった課題が関係しています。どの業界にも言えることですが、建設業界は若い人材が不足し、高齢化が進んでいます。どうしても「きつい・汚い・危険」という、いわゆる「3K職場」のイメージが強いことも原因のひとつではないかと。人材不足は、我が社にとっても事業存続の大きな問題点であることは確かでした。人材不足に加えて、現技術者の安全性の確保、生産性の向上においても、今後どうするべきかを考えていました。そのような中において、長年お付き合いのあるコマツ宮崎さんから「(2016年)新たにICT建機を出すことになりました。PC200i-10の1号機をぜひ御社で導入してほしい。」と提案があり、メーカーであるコマツの大橋社長も※直々に挨拶に来られたんです。ゆくゆくは建設業界にも、AIやICT導入が必要不可欠になってくるとは感じていましたし、国も積極的に推進していました。何より競争の激しい同業他社との差別化を図るための手段の一つになると考えた結果、導入を決意しました。
※現 株式会社小松製作所 大橋徹二 代表取締役会長

ー導入に対する不安はなかったのでしょうか?

(田村卓也 専務)

正直なところ、当初はICT建機への期待よりも不安の方が大きかったですね。導入にあたり、重機の価格が通常の2倍ほどかかってしまうこと、本当に費用対効果が得られるのかという疑念。また、重機オペレーターからの反対意見も多くありました。彼らからすれば、これまで培ってきた経験と技術で今後もやっていけるという自負があったと思いますし、わざわざ高額な機械を導入する必要があるのか、といった声が上がっていたのも事実です。当時、コマツ宮崎さん以外にもICT建機を販売しているところがありましたので、そこはしっかりと比較検討させていただきました。
結果、他社と比べたときに、絶対的に長けていたのがコマツ宮崎さん独自の「マシンコントロール」という技術。価格はコマツ宮崎さんの方が高額ではありましたが、導入後は、より安全性・生産性の向上を図ることができると確信して、決めさせていただきました。導入後、早速現場でICT建機を使ってもらうと、導入前の意見とは一変。その使い勝手や精度の高さにみんな満足気な様子でしたので、正直ホッとしました。 コマツ宮崎さんのICT建機を国内で初めて導入するというのは、建設業界の中で話題性も集めました。どうせやるなら1番に!という、強い思いもありましたね。

技術者の安全が確保され、働きやすい環境づくりを実現。
ICT建機の保有は、リクルートのPRにもつながっている。

ーICT建機の導入後、具体的にどのようなメリットがありましたか?

(田村努 社長)

当社では5台のICT建機を保有していますが、このことによって田村産業という会社のイメージが飛躍的に上がったと実感しています。国内初の導入ということで業界内において少しずつ社名も浸透し、国土交通省や宮崎県が進めるICT建機を使った工事では、ありがたいことに「ぜひ田村産業さんにお願いしたい」と入札のお声がけをいただくようになりました。また、ICT建機を初めて使うという元請けの会社に対して、施工業者としての提案やアドバイスができる体制になっているので、安心して仕事を任せていただけています。
会社として一番重要なのは、何より技術者の安全性を確保することです。もちろん施工の効率化や生産性の向上も大事ではありますが、まずは従事いただく人そのものではないかと思います。
当社でのICT化が進む中、私が感じた大きな変化は現場で人が動かなくて良くなったということです。人が動かなくていいということは、リスクの軽減に直結します。例えば、これまでは人海戦術で行ってきた測量や丁張りの作業も、機械を入れることで不要になりました。信じられないかもしれませんが、昔は測量機を背中に抱えて山に登っていた時代もあったんですよ。今では現場の施工状況も、パソコンひとつ。会社にいながらデータとして管理、把握できるので本当に便利になりましたね。

(田村卓也 専務)

ICT建機導入後に請け負った公共工事においては、ほぼ100%がICT建機を使った施工になっています。当社で受注している現場は、元請けと下請けが7:3の割合ですが、特に下請けの場合、ICT建機をリースで対応しようとすると、金額が合わないことがほとんどです。こうしたときに、ICT建機を自社で保有しているという強みが活かせます。購入したからには使わないと勿体無いですし、さまざまな現場に挑戦し続けられるというのも大きなメリットになっています。 導入当初は、国土交通省や宮崎県の技術者、建設・土木を専攻する学生など、多くの人を対象とした現場見学会を開催してきました。今では当たり前のようになったドローンでの測量なども当時はまだ珍しく、依頼を受けて開催することもありました。当社のPRにもなりましたし、これから就職を決める若者に対して、建設業界の今を知ってもらう良い機会になったのではないかと自負しています。もちろん実際には泥臭い現場も多くあって、きれいごとばかりは言えませんが、きつい現場があるからこそICT建機の魅力がより実感できるのではないかと考えています。

自社の可能性を引き出すツールとしてICT建機を活用し、
クライアントとの信頼関係や施工に対する満足度をさらに高めていきたい。

ー今後の課題や、ICT建機の活用方法について教えてください。

(田村努 社長)

ICT建機がもたらす安全性の確保や生産性の向上、人材確保の可能性はそのままに。今後は、よりクライアントからの信頼を得るためにも、技術者一人ひとりのレベルアップをしていかなければならないと考えています。当社が保有するICT建機以外の重機50台を動かすためには、やはり技術者の経験や技術が必要です。ICT建機を保有しているという強みは生かしつつ、会社全体の技量もこれまで以上にアップすることを念頭にやっていきたいです。 我々建設業界は、地域のインフラ整備や維持の担い手として社会の安全、安心を確保する存在でなければなりません。基幹産業として地域の雇用も支えていきたいですし、地域創生にも貢献していきたいです。

ー導入を考えられている同業者の方へメッセージをお願いします。

(田村卓也 専務)

建設業界全体が、これまで以上に盛り上がりを見せ、また、時代の流れに淘汰されないためにも、ICT化やICT建機の導入はいずれ必要不可欠になってくると思います。ICT建機を自社で保有していることが当社のストロングポイントなので、できれば他社さんには導入してもらいたくない、というのが本音ではありますが(笑)。最近では、導入を検討されているという会社の話もよく耳にしますので、それだけ関心が高まっているのだと思います。日進月歩で進化するシステムや技術に、我々もしっかりと追いついていけるように、今後もコマツ宮崎さんと手を取り合いながら、邁進していく所存です。

田村産業様が制作されたi-ConstructionのPR動画